前回と前々回の「着地型旅行」のブログには、観光団体等から問い合せなどをいただき、
反響がありました。今回は、少し長文ですが読んでください。
なぜ、旅行会社が着地型旅行に積極的でないのか。
簡単に言えば、「従来の観光地」や「話題性のある観光地」などに行く「発地型旅行」で営業した方が、お客さんも集まりやすいし、利益率も高いからです。
つまり、「観光資源」を「観光地」にしていくには、時間もお金も人材もかかるので、旅行会社として地域貢献したいという思いはあるものの、現実的に支援できなく、これらの業務は、「行政や観光団体、地元の人たちなどにまかせよう。」という考えもあると思います。(私は、旅行会社も一緒に参画させてもらうべきで、それが、新たな旅行商品となり、今後の旅行会社の発展につながっていくと考えています。)
言いかえれば、参画しているみんなが、持っているノウハウを持ち寄り、実行していくこと
で、何らかの恩恵があるようにすればよいのです。
さて、企画した旅行に対し参加者を募集する時、旅行会社が企画した商品は、「発地型旅行」でも「着地型旅行」でも、民間事業者扱いとなり、それなりの広告宣伝費が必要です。
(一般の新聞は、着地型旅行でも、よほど地域とのかかわりをアピールしないと、情報提供をしても、記事として取り扱ってくれず、広告扱いとなります。)
そのため、募集パンフレットを作成したり、新聞や冊子なら広告枠に掲載するための高額な
広告宣伝費が必要となります。
旅行会社は、継続的な経営をする必要がありますので、いかに効率的な募集方法で参加者を
集めるかの工夫が必要です。
少し専門的な表現になりますが、旅行会社が主催者となって行程等の企画を考え、参加費は一人◯◯円と設定し、一般募集するツアーがあります。
旅行パンフレットや新聞広告に掲載されている旅行がこれに該当しますが、これを「募集型
企画旅行」といいます。
なお、旅行会社は、「1種」、「2種」、「3種」、「地域限定」のどれかに分かれており、
それぞれ旅行企画ができる範囲(地域)が決まっています。
その中で、全国的にも「3種」の旅行会社が一番多いのですが、「3種」と「地域限定」
は、募集型企画旅行を企画するとき、行動できる地域は、旅行会社がある市町村と隣接する
市町村に限定されています。
(例えば、滋賀県野洲市にある旅行会社が、京都や、滋賀県内でも彦根などへの旅行企画は
できません。)
これに対し、グループや団体の会員などが、旅行会社にオリジナルの旅行企画を依頼し、旅行代金を設定し(参加人数によっては、代金が増減しますが。)、旅行されることを「受注型企画旅行」と呼びます。(参加者は、旅行会社が一般募集するのではなく、あくまで団体が会員に対し募集し、団体が参加者を集約するという方法です。)
また、会員を対象にした「受注型企画旅行」は、「3種」の場合、全国どこでも旅行企画ができるというメリットがあります。
旅行会社にとって、一番効率的で利益率の高い旅行は、「受注型企画旅行」です。
それは、広告宣伝費などの募集経費がほとんどかからないからで、旅行会社の経営のポイントは、このような受注型企画旅行ができるお客さまをもつことだといわれています。
それでは、地域の「3種」の小規模な旅行会社が、積極的に「着地型旅行」に取り組めるようにするには、どのようにすれば良いでしょうか。
まず、現状ですが、発地型旅行や着地型旅行を「募集型企画旅行」として主催し、高い広告宣伝費を使って募集し、万一、人数が集まらず中止となれば、相当な赤字となりますので、募集型企画旅行を主催旅行として積極的に実施している会社は少ないです。
むしろ、旅行会社で積極的に実施できるのは、旅行業登録をしている「観光協会など」だと
思います。
そのため「着地型旅行」を旅行会社が真剣に取り組むようにする(国などの行政が推進を提
唱する)ならば、広告宣伝費の助成制度や、募集を安価でできる「しくみ」づくりをする必要があります。
では、私が考える効率的な募集方法を、提案します。
それは、例えば「◯◯ファンクラブ」なる組織を地域の観光協会等が事務局となって組織し、全国から個人会員を集めることです。
目的は地域の観光振興で、さまざまな情報をメールで送信したり、紙ベースで発送すると
いうものです。(経費をかけないのなら、メール配信です。)
もちろん、「ファンクラブ」の加入には、年会費を支払ってもらっても良いし、無料でも良
いと思います。とにかく、多くの方に入会してもらう手法を考えます。
この組織の会員に対して、旅行会社が企画した「着地型旅行」も、発信対象としてもらい、事務局を通じて、募集ビラをPDFなどにしてメール発信してもらいます。
募集型企画旅行なら、旅行会社で申し込み受付をすれば良いし、高額な宣伝広告代が必要
なくなります。
なお、地域の観光協会等が「3種」の旅行業登録をしているなら、その観光協会が企画された「着地型旅行」は、会員さんを対象に募集しているので、旅行範囲が限定されない受注型旅行の「着地型旅行」が実施できることになります。
とにかく、このようなしくみを実現するには、地元の観光関係団体等の連携が必要です。
また、地域の観光協会等と連携できない場合、「旅行会社」と「その上部統括組織」が連携
し、統括組織に、前述した会員制組織を作り、事務局になってもらうこと考えられますが、
こちらは「組織」をつくっても、「統括組織の事務局」と「一般者」との接点が少ないので、どれだけの一般会員を集められるかという課題があります。
そのため、この統括組織には、旅行会社に「着地型旅行」を作ってもらえるように、具体的な財政支援などの要望を行政などにしてもらう方が良いと思います。
私は、これまでの実績から、着地型旅行には、まだ遠くの人が来ることは少なく、同じ県や隣接している県からの参加者が多かったので、地域の観光協会等と連携して実施する方をすすめていければと考えています。
このように、高額な広告宣伝費を支払って、不特定多数の一般者に募集するよりも、地域に関心を持ってくれている「ファンクラブ」の会員さんに対し、ピンポイントでメールなどで
情報提供した方が効果的だと考えています。
あとは、地域の観光協会などが、このようなしくみを取り入れてくれることを願っております。
それと、旅行会社も「着地型旅行」を、いきなり旅行業法に準じた「募集型企画旅行」や「受注型企画旅行」で実施するのではなく、まずは、いろんな団体やグループが実践している「旅行業法に抵触しない手法」で、ハイキングなどからはじめて、参加者の感触を確かめても良いと思います。
最後になりますが、「観光」業界は、それに携わる業種の裾野が広く、それぞれの経営規模が小さいのが現状です。(コロナのおかげで、それが証明されましたね。)
でも、小規模だけに、みんなの連携と知恵と工夫で、思いを実現できる夢のある業種でも
あります。
新型コロナが収束すれば、コロナ前と違った新しい観光スタイルが始まり、そこに、
「着地型旅行」の発展の可能性があると信じています。
がんばろう日本!!
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